2008年01月24日

宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝

東京国立博物館で開催中の「宮廷のみやび 近衛家1000年の名宝」に行ってきました(会期:前期・1月2日から27日まで、後期・1月29日から2月24日まで)。





藤原鎌足から連綿と続く藤原家・近衛家にゆかりの宝物を京都は陽明文庫などから出品です。

いや、なんというか…「名門」という言葉面だけだと、ちょっとそっけない響きがするのですが、これらの品々を見ていると、彼らが権力の中心に居りながら、または、政治の渦潮の中を泳ぎながら、という、とてもハードな頭脳労働をしながら、これだけ豊かでそれぞれの個性が輝く世界を築き上げて楽しんでいたんだねーということに思い至り、やっぱ、違う人は違うよ!と尊敬の念をまた改めて強くするわけです。私も1億分の1でも、こういう生き方に近づきたいものです。

特によかったものを出品リストの順にメモしておこうと思います。

《車図》。牛車そのものを正確に描写した絵なのですが、これがまあ、これだけでなんだか羨ましい。牛車ってこんな優美なフォルムしてたんだ、とか、内装が素敵過ぎる、とか。この時代のいいとこのお嬢さんに生まれたかったです、1日くらいでいいけど。

国宝の《金剛経筒》や《金剛経箱》っていうのは、あと、目玉の《御堂関白記》もだけど、これは去年の春、京博での「藤原道長」展で見たなあ…と思って、帰宅してから過去の記録をさぐってみたら、やはり見てました。

珍しいもので心惹かれたのは《五弦琴譜》。楽譜っていうのは常々、それだけで非常にイマジネーションをかきたてられる芸術品・表象だと思っているのですが、特に、こういう自分が読めない楽譜っていうのは、いやがおうにもロマンを感じるわけです。楽器はインドから東アジアに伝わった五弦琵琶だそうで、楽譜が縦書きで漢数字っぽいものも散見されるのがなんだかお琴の楽譜を連想させて、どんな調べなんだろう〜と想像を膨らませるわけです。

あと、今回の展示は、書がお好きな人にはたまらんのやろうなあ、と思われる宝物がずらり。私なんかは素人なのでなんとなーく雰囲気だけで、これ好きだな、とか、あれも好きだな、みたいな感じで見てるわけです。そんな中でチェックつけてあるのが後奈良天皇筆《詩懐紙「花中偏愛菊」》。太目の字なんだけど典雅さをたたえた感じが素敵でした。

あと、孝明天皇筆《詠糸桜和歌巻》。近衛家の桜の宴に出席されたのかな?そのときの感興を詠んだ御製のお歌。書も表装もとっても素敵。こういう古い和歌が書かれた字、読めたらなあ〜って思うんだけどなあ。

近衛家ひろ(←漢字…わからん)がセクション2つくらい使って大きく取り上げられていたわけですが、まず《百寿》という書が気に入りました。百の寿の上に「天開寿域」と書かれています。その趣味のよさの中に、ただそれだけではない、ノーブルともいうべき視点の高さを感じて、高貴な人はこうでなくっちゃ、と思ったわけです。

あとは、よくがんばりました!ていう漢字の《大手鑑》とかも。彼の底知れぬ教養の深さと、執念深いとも言えるマネジメント力というか計画性・実行力というものを感じました。

それと、このセクションに飾られていた表具裂の数々も素晴らしい。どれも美しく、これを集めた人のセンスを感じます。

あとは彼が描いた《蓮鷺図》に若干驚嘆。蓮の葉の縁の描き方がなんともいえず私の心をとらえてはなさないというか。この筆遣いは和なのか漢なのかと浅学の身は悩みました。

ちなみに、ちなみに。彼が10歳の時に描いたという大傑作があります!《鐘馗図》。超かわいいので私の大のおすすめの一品となりましたでございます♪

それと《春日権現霊験記絵巻》もよかったです。名門の家にまつわるお話を描いたものだけど、えらぶった感じがしなく、登場人物がとても生き生きと描かれていて魅力的でした。

部屋をどんどん進んでいくと近衛家に伝わる名品が展示されています。

私が気に入ったのは指人形「気楽坊」。かわいすぎます…。何がかわいいって、これは確かある帝のもので(確かそう。記憶があいまい。)、解説によるとこれを使って女官が近臣に文や歌をつかわしたそうなのです。かわいすぎる…。なんてお茶目なんだ…。

それと突然、酒井抱一《四季花鳥図屏風》。どうしてここに抱一なのか、確かセクションの最初の解説に書いてあったようななかったような…でもうろ覚えなので、由来がよくわからないのですが、やっぱり抱一は素敵すぎて、眼福、眼福、といったところでございました。

藤原定家筆の《和歌懐紙(反古懐紙)》などは非常に興味深かった。和歌を推敲した紙を表装したものなんだけど、ああ、名人もこんなに悩んで歌を作るのね、と、土下座したくなりました。深く深く心に刻もうと思いました。

この日は後のスケジュールが詰まっていて、あまりのボリュームに、展示物を見てはうっとりし、腕時計を見ては、間に合うか、間に合うか、とひやひやしながら、という感じでまわっておりましたが、なんとかうまい具合にタイムキーピングもできて一安心。平常展示のほうもめい一杯楽しんでまいりました♪

気になったこと・ものをいくつか。

十六羅漢像という絵を見ていたのですが、世の東西を問わず、“聖人”の頭にhaloが描かれることの不思議さ。これはある程度文化交流があっての結果なのか、それとも、もっと人間に共通に普遍的に備わる感覚なのか。うーん。

歌川国定(三代豊国)の《宝船図》はよかったなあ!!浮世絵風の七福神!こんな粋な宝船図、部屋に飾りたい〜!!

貫名菘翁《いろは屏風》にはやられました!83歳の作品。もう、自由奔放、という感じです。こういう年のとり方をしたいと思いました。

あと、おおっと思って見入ったのが松林桂月という人の《渓山春色》。かなり新しい感覚だなあ、いつの人だろう、と思ったら結構最近の人、1876から1963年の方と書いてありました。南画の近代化に尽くした人、だそうです。印象深いのは墨の線なのか、色なのか、描く対象に存在感が溢れているのです。


やはり、さすが東博だなあ、と、満腹、満腹、で出てまいりました!これまで意外とじっくり見る機会のない東博でしたが、京博ばかり贔屓にせず(笑)上野に来たらちゃんとチェックしようって思いました。でも上野に来るときの展覧会ラインナップっていっつもボリューム過多だから、余裕がないってのも事実なんだよね〜。

ちなみに本館においてあった英語の手引き。






日本語のもあったけどカラー図版がきれいだったから英語のをもらってきました。でも結構読んで面白いのです。巻物は右から左に読みます、ていう、そうか外国の人は知らないんだ、ということも書かれているんだけど、それが「時の流れというものを感じさせるように」っていう意味があったなんて、日本人の私も知らなかったよ!そんな新発見があって、思わぬ収穫物でした。

posted by はな at 21:28| Comment(14) | TrackBack(6) | 美術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
はなさん、こんばんは。
私は火曜日に行ってきたのですが、
まだ記事にできてません・・・
でも、御所人形とか、表装の布とか、
近衛家の雅な暮らしを垣間見て、
ため息してきました。

最近は特別企画展と常設を抱き合わせてみると、
ヘットヘトになってしまうので、
別の日にまた出かけるようにしています。
これだけのものを大切にする暮らし、
憧れます〜〜★
Posted by あべまつ at 2008年01月24日 22:01
こんばんは、はなさん。
《車図》、牛車の内装が素晴らしかったですよね。
外におおっぴらに出歩けないお姫様はせめてこのような装飾で心慰めたのでしょうか。
とにかく書が多くて、一部しか草書の知識なない自分がもどかしい感じでした。
お手本にした和漢朗詠集があったのは嬉しかったです。
Posted by しのぶん at 2008年01月25日 00:05
はなさんへ
とても内容の濃いブログを拝見して敬服しました。昨日は、お香の教室で先生は、とても博学なので家ひろさんがどうして伝世の書画を表装しなおせたか聞きましたこところ、徳川家の歴代の将軍半分くらいに近衛家から輿入れをしていて徳川家からの援助がかなりあったとのことです。
それを聞いて納得しました。
私は、目が悪いのではなさんのきれいなピンクの字は読みにくいのが残念です。

また、お邪魔します。
Posted by lily at 2008年01月25日 09:27
こんばんは。

気がつけばもう前期終了ですね。
時の経つのはほんとあっという間です。
でも1000年の歴史はそれとは比較にならないほど
重みがあり、残された品々も見事なものばかりでした。
Posted by Tak at 2008年01月25日 18:31
♪あべまつさん♪
あべまつさん、こんにちは!
書も素敵でしたが、ぱっとみためにすぐ「華やかだな〜」って思わせる品々もよかったですよね^^
私はお気楽パラサイトシングルなので(もうしわけありません…)ブログをがーっと書く時間もあるし、それがストレス発散にもなっているのですが、あべまつさんは奥様&お母様業がるから、じっくり時間をかけて記事になさってくださいね。また拝見しに行きます!

私、時間貧乏なので、一旦外に出ると、近いところは全部みてやれ、という感じなので、脚がむくんでも歩き回ります。この日は都美もいってきました!
我ながら物好きだと思います^^;




♪しのぶんさん♪
しのぶんさん、こんにちは!
しのぶんさんもあの牛車にお心惹かれたんですね〜。あの牛車の御簾の間から外を垣間見るお姫様の様子を想像したりして楽しみました。
しのぶんさんは書もされるのですか?素敵です!
私はもうひどい悪筆で…ペン書きですら悲惨なのに、筆を持たせたらもう…という感じです。
でも、せめて読めたらなあって思いました。



♪lilyさん♪
lilyさん、こんにちは!お越しくださりとても嬉しいです。
内容が濃いというのではなく、思ったことを全部いれこんでまとまりがないといった感じなので恐縮です…。お香をなさってるんですね。すごく素敵です!そしてご立派な先生でいらっしゃるんですね。なるほど、そのお話を聞いて将軍家と近衛家の密接な関係が具体的に想像できるような気がしました。

せっかくだったのに字が読みづらくてごめんなさい…。ブラウザの設定を変えてみたのですが、このブログの字の大きさは変わらないみたいですね。たぶんテンプレートで最初から字の大きさが決まってしまっているようなのです…><こんなちまちました日記ですがまた文字量の少ないときなど、お気軽に遊びに来てくださると嬉しいです!




♪Takさん♪
Takさん、こんにちは!
そうなのです、もう会期も折り返し地点、という感じです。ほんと最近時間の経つのがはやくてはやくてぎょっとしてしまいます…。毎日を大事にすごさなくては〜!
あれだけの宝物を残した人々も毎日を濃密にいきていたんだろうなって思います。「みやび」っていうとなんだかゆったりしたイメージがうかぶけど、けっしてゆるーく生きていたわけでなく、和歌も書も絵も音楽も、たえまない鍛錬があったんだろうなって思います。
Posted by はな at 2008年01月25日 19:42
コメント&TBありがとうございました。
あれだけ凄い雅な世界を見せて頂けると、敬愛なる抱一君が霞んでしまいます。
先にオークラであの屏風見といて良かったです。
今回は家熈さんの1人勝ちでした。
「数寄者とは・・・」って感じでしょうか?
『大手鏡』のマニアックぶりが良いです。

今後とも宜しくお願い致します。
Posted by るる at 2008年01月25日 22:56
こんばんは
コメントありがとうございました。
わたしが見損ねていた内容などが詳しく書かれていて、とても勉強になりました。

>孝明天皇筆《詠糸桜和歌巻》
これで思い出しましたが、京都御苑には近衞桜という見るも繊細な糸桜が今も咲き続けています。

三藐院信尹の書、家熙表具、御所人形らに逢えて嬉しい展覧会でした。

これからもよろしくお願いします。

わたしも持ち運び出来るちびっこなぱそを探しています。数日前の記事に眼が開かれたような感じです♪
Posted by 遊行七恵 at 2008年01月25日 23:28
はなさん はじめまして。
凄いですねー!
美術展の詳しい報告に、感動しました。
来月は、お友達とルーブル展に行く予定なので、記事が参考になりました。
私も基本は『お一人様』大好き派なのですが、お友達と行く時は、鑑賞半分、(観た後の)お喋り半分で行きます。
また寄らせていただきます。
Posted by 曜子 at 2008年01月25日 23:29
♪るるさん♪
るるさん、こんにちは。
お越し頂きありがとうございます!
抱一さんの突然の登場にはちょっとびっくりしましたが、でもいつもながら素敵で満足満足でした。今年は琳派の大きな展覧会もあるしいろいろ活躍してほしいですね!
家熈さんは…数寄者がつきぬけるとこういう感じが、というのを見せてくれたような気がします。ただただ、すごい、というか…。

マイペースでたらたらやってるブログですがよかったらまたお越しください!



♪遊行七恵さん♪
遊行七恵さん、こんにちは!
お越し頂きありがとうございます。
近衛桜というのがあるのですね!
それはいいなー、みてみたいなーという感じです。京都には宝物のように歴史がきらきら残っていますね。

なんでもありのマイペースブログですが、これからもお寄りいただけたら嬉しいです!

お互い、いいモバイルなものもみつかるといいですね☆



♪曜子さん♪
曜子さん、こんにちは!
おこしいただきありがとうございます♪
ながながだらだら書いた記事読んでくださってありがとうございます〜。詳しいというか、チェックしたことをろくに消化もせず、書き連ねただけ…という感じです^^;
ルーブル展も楽しんでいらしてくださいね!
とっても華やかな世界でした☆
なんでもかんでもなブログですが、またお寄りいただけたら嬉しいです!


Posted by はな at 2008年01月26日 19:24
はじめまして。こんにちは。

晴歩雨読にTBとコメントありがとうございます。
はなさんの細やかな記事楽しく拝見しました。
『五弦琴譜』に触れていらっしゃったのがうれしかったです。
琴と言えば『宇津保物語』で琴の伝受が重要視されていたとあらためて思い返されます。当時、こんな曲が演奏されていたのかと思うと楽しいですね。

TBお許しください。
Posted by ruihui at 2008年01月27日 11:40
コメントありがとうございました。
詳しく書かれていて素晴らしいです。
書には造詣のない私なので触手はひたすら絵巻物でしたが。
見にいって良かったです。
Posted by RUBE at 2008年01月27日 13:08
♪ruihuiさん♪
ruihuiさん、こんにちは。
お越しくださりありがとうございます!
五弦琵琶の楽譜は不思議な魅力をたたえていましたよね〜。どんな調べだったのだろうと想像をめぐらせます。
晴歩雨読って素敵な名前ですね!
これからも宜しくお願いいたします☆



♪RUBEさん♪
RUBEさん、こんにちは。
お越しくださりありがとうございます!
私も書についてはまったく手が出ません…(他の分野に手が出るかといえばそれも怪しいですが^^;)
でもまずは雰囲気を味わうところからはじめたいなと思ってます!
こうやっていろいろ博物館や美術館をまわっていると習いたいものが増えてきて困ります^^;
またお越しくださいね!
Posted by はな at 2008年01月28日 23:02
はなさん、こんばんは。
 本日は拙ブログへのご来訪&コメントありがとうございました。「宮廷のみやび」についての記事を読もうと思って飛んできてびっくり、すごい充実ですね! 家熙の描いた鍾馗様はわたしも大好きでした。たくまざるユーモアがありますよね。

 また、過去の記事ですが、昨年5月の若冲『動植綵絵』里帰り展示にはわたしも行ったので、こちらも興味深く見せていただきました。すばらしい行動力に驚嘆です。
Posted by かんべえ at 2008年01月30日 22:36
♪かんべえさん♪
かんべえさん、こんにちは!
こちらにもお越しくださりありがとうございます〜☆
この記事、充実というより、気になったところをずらずらと書き連ねたという感じで、あまり内容がないのがお恥ずかしいのですが…><
美術館などの展覧会は好きなのでよく足を運びます。かんべえさんも若冲を見に行かれたのですね!すごいこんでましたよね〜^^;でも行けてよかったです!

適当に何でも書くブログ、という感じですが、また起こしくださったら嬉しいです♪
お待ちしてます!
Posted by はな at 2008年01月31日 14:31
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