その情報を最初に耳にしたとき「でも、行かないなあ…」って思いました。
去年の秋、狩野永徳展で上洛した折、偶然に見つけた河鍋暁斎。08年、つまり今年の春にそれを追いかける覚悟は出来ていたのですが、なんとなく、私の気持ち的には京都より成田のほうが行くのがしんどい…。成田ってめちゃくちゃ遠くて疲れるイメージない?だから行くつもりはなかったんですよね。
でも、成田山での暁斎展を見に行かれたアート系ブロガーさんの書かれた記事をちらほらと拝見しているうちに…むずむずと…。
決め手はずっと前にpaletteさんのブログでお話を聞いていた、絶対いつかこの目で見たいと思っていた「新富座妖怪引幕」、展示されるのが今回限り(←それ、どういうこと?もう永久にお蔵入り?京都にもこないの?)というのを知ったことです。
これは行くしかあるまい…!
そう思って行ってきました!!!!!
はい、つきましたよー。こちら、お寺の正面。

赤がかっこよかったから撮りました。

色鮮やかな三重塔。

さてさて、お寺の奥の方にうねうねと入っていき、霊光館というお寺関係の文物を展示するところっぽい建物に入ります。こちらの展覧会タイトルは「天才絵師河鍋暁斎」です。

いやはや、来てよかったよ!!ものすごく魅力的な作品に出あってきました。
《風神雷神図》。暁斎の絵の肉や筋や骨格の描き方に惹かれます。この風神様・雷神様もその体のダイナミクスが小気味よいのです。そして「いやっほー!」とか言ってそうないたずら小僧のような表情。
《大森彦七鬼女と争うの図》。これは成田山に奉納された絵馬。展示のビジュアルにも使われているもの。鬼となった元・お姫様。すごい迫力です。その鬼の肉体・爪の迫力もさることながら、着物や髪の一本一本までもが襲い掛かってくるような感じ。
暁斎はいろんな、ほんとにいろんな画風の絵を描くのです。《弾琴五美女憩図》みたいな綺麗な絵も描く。ちなみにこの絵は表装にあたる部分も自分で描いていたように見えたんだけど、それもなかなか華やかでセンスよくって面白かったです。
《吉原遊郭図》も好きだな〜。この踊り狂ってる男、ほんとあほな顔してるわ。馬鹿だね〜。馬鹿すぎる。徹底的に馬鹿になれた酒宴の楽しさを知ってるからこういう馬鹿な表情を描けちゃうのかな。あと、お金を請求されてる男の人の顔も楽しい。
そしてすごく好きになったのが《文読む美人図》。こういう感じの美人図に最初惹かれて河鍋暁斎の名前を認識したんだよね。でもそのあと、あまりにも幅広い芸風に驚かされて、尻子玉を抜かれましたが(表現がお下品でごめんなさい、尻子玉については後述?)。髪型が素敵なんだ。解説によると「稚児髷(ちごまげ)」というそうな。あと、艶やかな着物に紐みたいなもので帯のように腰をとめているんだけど、それがすごく素敵。
《白衣観音図》は先日三井記念美術館で見比べた酒井抱一と暁斎の観音図だったら、抱一の観音図のほうに表情が似てました。涼やかな表情ってことがね。暁斎ってほんといろんな雰囲気を自在に描きわけるんだなあって思いました。
あと暁斎の娘の暁翠の作品も出ていました。《布袋に唐子図》とか《百福図》とかすごく好きだった。この娘も陽気な天才だったんじゃないかと思ったよ。
同じく暁翠の《寛永時代美人図》は暁斎の美人図と雰囲気似ていたなあ。好きです。
で、順路の最後のほうに展示されていた面白すぎる絵たち。《風流蛙大合戦之図》《新板大黒天福引の図》《暁斎楽図 化々学校》。いくら見ても見飽きない。お化けの学校で河童の生徒が”SI RI KO TA MA”を習ってるのには不覚にも吹き出しました(軽く、ね。大丈夫、周りに人はいなかったから。)
こちらの展示はこれくらいでしょうか。
ほんとにいろんな多彩な世界を見せてもらいました。今、私の中で非常に河鍋暁斎熱が高いです、非常に惹かれてます。
そしていよいよあの引幕を見に…!
場所は歩いて5〜10分程度のところにある成田山書道美術館にうつります。
どきどき。
こちらの展示会タイトルは「酔うて候―河鍋暁斎と幕末明治の書画会」とのこと。ざくっとわけると、霊光館で展示されていたのは落ち着いて取り組んだもの中心、こちらの書道美術館に展示されているものは即興性が高いもの中心というふうになってます。
どきどき。

で、見たんですよ、《新富座妖怪引幕》!
感動しました。ほんとに感動した。
セリフが安っぽくって恐縮ですが、元気をもらった。勇気をもらった。心の中に晴天が広がって、気持ちいい風が吹いた。
近寄って見た時は「酔って短時間で描いたからさすがに線がものすごく荒いなあ〜」なんて瑣末なことを考えてたのですが、この引幕が展示されている場所からぐっとひいたところに絨毯がひかれていて、靴を脱いで座って見ることができるようになってたんです。実際に劇場にいる目線で見られるように、ていう粋な計らい!ここで、もう、思う存分堪能してしまったよ!あれだけの大画面を破綻なくまとめる、なんてもんじゃない、引幕から溢れ出さんばかりの痛快なるエネルギー。
来て本当によかったって思いました。
その他の作品も書画会で描かれた軽妙洒脱なものばかり、みんな楽しめました。《布袋の蝉採り図》とか《群猫釣鯰図》とか好きだったかも。
ちなみに書画会の雰囲気↓

あの引幕と私は一期一会かもしれません。でも、強く願えばまたいつか会える日があるのかもしれない。それはわからないけど、今日は本当にきてよかった。
お土産にこんな猫の絵のポストカードを買ってきました。
